韓国に商品を売る越境ECでは、「150米ドル以下なら関税がかからない」という基準が、価格設定と通関の両方の分かれ目になります。ただしこの基準は「商品が安ければ何でも免税」という意味ではありません。使う人、買い方、商品の種類によって、150ドル以下でも通関で止まることがあります。
この記事では、ジェトロの資料(2025年12月の「小口貨物の通関・関税制度(韓国)」ほか)をもとに、韓国の小口通関のしくみと、売り手が価格やセット商品を決めるときの注意点を整理します。制度は変わることがあるため、出品の前には必ず最新の公式情報を確かめてください。
150ドルの免税基準とは
ジェトロの資料では、韓国居住者が受け取る自己使用の物品で、総課税価格が150米ドル以下のものは、関税が免除されるとされています(関税法第94条)。米国からの輸入は、目録通関や簡易輸入申告の区切りが200米ドルになります。
押さえておきたい点は3つです。
- 対象は「自己使用」の物品:個人が自分で使うものが前提で、転売目的のものは対象になりません
- 金額は「総課税価格」で見る:商品代金だけでなく、課税の対象になる価格の合計で判断されます
- 150ドル以下でも、通関の手続きを省略できるとは限らない:次の章のとおり、手続きの種類は金額と商品の種類で変わります
なお、郵便・EMSで送る場合は、ジェトロの別のQ&Aで、150ドル以下なら関税と付加価値税の両方が免除されると説明されています。ただしこのQ&Aは調査時点が古いため、現在の取り扱いは韓国関税庁などで確認してください。
国際宅配便の通関は、金額で3つに分かれる
国際宅配便(EMS以外の、税関に登録された宅配業者が運ぶ荷物)の場合、ジェトロの資料では、通関の方法が金額で次のように分かれます。
| 通関の方法 | 金額の目安 | 中身 |
|---|---|---|
| 目録通関 | 150ドル以下(米国は200ドル以下) | 荷送人・荷受人の情報、品名、価格、重量などを書いた通関目録を出すだけで、輸入申告をしなくても通関できる |
| 簡易輸入申告 | 150ドル超2,000ドル以下(米国は200ドル超) | 税関が申告内容を正確と判断すれば、検査なしで許可される |
| 一般輸入申告 | 2,000ドル超、または上の2つの対象外になる物品 | 通常の輸入申告。手続きの手間と時間が増える |
売り手にとっての意味は、150ドルの線が「関税がかかるか」だけでなく「どの手続きで通すか」も決めることです。150ドルを超えると、免税にならないだけでなく、目録通関が使えず、通関の手間も増えます。「超えた分だけ課税される」のではなく、免税が適用されなくなる点も、購入者に伝えるときの重要なポイントです。
150ドル以下でも、目録通関にできない商品がある
ジェトロの資料によると、150ドル以下でも、次のような物品は目録通関の対象外です。
- 医薬品、漢方材
- 健康機能食品
- 食品類、酒類、たばこ類
- 農林畜水産物など、検疫の対象になるもの
- 化粧品のうち、機能性化粧品、プラセンタ化粧品、ステロイドを配合したもの、成分不明のものなど
- 知的財産権の侵害が疑われるもの
- 品名・規格・数量・価格・受取人の情報などが、通関目録に正確に書かれていないもの
- そのほか、法令で通関が制限されているもの
日本製の食品や化粧品は、越境ECで人気が出やすい商材です。しかしこの表のとおり、金額が小さくても、通常の目録通関では通せない商品が含まれます。出品の前に、売ろうとしている商品がこの対象外に当たらないか、当たる場合はどの手続きが必要かを確かめてください。ここを確認せずに出品すると、購入者の手元に届かない原因になります。
注文を分けても、合算されることがある
150ドルを超えるのを避けようと、注文を分けて送る方法は通用しません。ジェトロの資料には合算課税制度が書かれており、次のどちらかに当たる場合は、各物品の価格を合算した額が自己使用の認定基準を超えると、関税免除の対象から外れ、合算して課税されます。
- 1件の船荷証券(B/L)または航空貨物運送状(AWB)で運ばれた課税対象の物品を、免税の範囲内に分けて通関する場合
- 同じ海外の供給者から、同じ日に買った物品を、免税の範囲内に分けて搬入し、通関する場合
つまり、同じ人が同じ日に同じ店で買った分は、まとめて見られるということです。まとめ買いが多い商材では、「1回の注文を150ドル以内に収める」前提で配送を組むと、通関の段階で想定が崩れる場合があります。
売り手が価格とセットを決めるときのチェックリスト
上の内容を、出品前の確認に落とすと次のようになります。
| 確認すること | なぜ必要か |
|---|---|
| 主力商品の単価と、よく買われる個数を円・ウォン・ドルで換算して並べる | 1回の注文が150ドル前後になる商品は、価格の少しの違いで通関の方法が変わる |
| セット商品や送料込みの価格で、150ドルを超えないか | 合計の価格が基準を超えると免税にならない |
| 商品が、目録通関の対象外(食品・化粧品・医薬品など)に当たらないか | 当たる場合は、金額に関係なく別の手続きが必要になる |
| 購入者が個人通関固有符号を入力できるか(注文画面の案内があるか) | ジェトロの資料では、国際宅配便の目録通関で、個人宛ての荷物には個人通関固有符号の記載が必要とされている |
| 150ドルを超えた場合の税金について、商品ページで案内しているか | 想定外の税金は、受け取り拒否やクレームの原因になる |
| 為替の変動で、基準を超える可能性があるか | 基準は米ドルなので、円やウォンの価格が同じでも、為替で超えることがある |
最後の点は特に見落としやすいところです。基準は米ドルで決まっているため、日本円の価格を変えていなくても、為替が動くと、ぎりぎりの商品が基準を超えることがあります。基準に近い価格の商品は、余裕を持たせておくと安全です。
基準の見直しの動きに注意する
150ドルの基準は、2015年に120ドルから引き上げられて以降、長く続いてきたと報じられています。一方で、2024年には韓国政府が海外直接購入への対策の一環として、免税の上限の見直しを検討していると伝えられました(出典:アジア経済(英語版))。ジェトロの2025年12月の資料でも、150ドルの基準は引き続き記載されていますが、今後変わる可能性はあります。
韓国向けの価格設計は、基準が変わっても収益が崩れないよう、関税や税金がかかる場合のシミュレーションも用意しておくのが安全です。最新の基準は、出品前と、価格を見直すたびに、韓国関税庁やジェトロで確かめてください。
よくある失敗
- 150ドル以下なら何でも免税だと思う:自己使用の物品が前提です。食品や化粧品、医薬品などは別の確認が必要です
- セットを作って150ドルを超えるのに案内しない:免税にならず、購入者に想定外の負担が出ます
- 注文を分けて基準を回避しようとする:同日・同じ供給者の分は合算課税の対象になります
- 為替を見ずに価格を固定する:円安・円高で、基準をまたぐことがあります
- 通関目録の情報が不正確:品名や価格、受取人の情報が正しく書かれていないものは、目録通関の対象外です
ハシゴロジで対応できる範囲
ハシゴロジの海外EC運用代行では、Coupangなどの海外モールへの出店と運用に加えて、国内倉庫からの出荷も自社の3PLでお引き受けしています。関税・通関の手続きは、提携する通関業者・国際配送会社と連携して進め、書類の準備と出荷設計は当社が行います。国ごとの小口免税の基準に合わせた価格設計のご相談も承ります。
なお、化粧品・食品は国ごとの規制確認が必要なため、ご相談時に、対象国で販売できるかを先に確認します。
Coupangで売り始める流れは日本からCoupangで売るにはで、手数料を含めた利益の計算はCoupangの手数料はいくら?で解説しています。
よくある質問
韓国向けの越境ECは、150ドル以下なら必ず関税がかかりませんか。
韓国居住者が受け取る自己使用の物品で、総課税価格が150米ドル以下であれば、関税は免除されるとされています。ただし、転売目的とみなされるものや、食品・医薬品・一部の化粧品など目録通関にできない物品は、別の手続きが必要になることがあります。
150ドルを超えると、どうなりますか。
免税が適用されず、課税対象になります。国際宅配便の場合は、目録通関は使えず、2,000ドル以下なら簡易輸入申告、2,000ドルを超えると一般輸入申告になります。
同じ人が1日に複数回注文したら、どうなりますか。
同じ海外の供給者から同じ日に買った物品は、免税の範囲内に分けて通関しても、合算して課税の判断がされます。
米国は200ドルと聞きましたが、日本からも200ドルまでですか。
いいえ。ジェトロの資料では、200米ドルは米国からの輸入について書かれています。日本からの荷物は150米ドルが基準です。
基準は今後変わりますか。
見直しが検討されたと報じられた時期はありますが、ジェトロの2025年12月の資料では、150ドルの基準が引き続き記載されています。出品前と価格を見直すときに、最新の情報を確認してください。
まとめ
- 韓国では、自己使用の物品で総課税価格150米ドル以下のものは、関税が免除される
- 150ドルは、免税かどうかだけでなく、国際宅配便の通関方法(目録通関・簡易輸入申告・一般輸入申告)も分ける
- 食品・化粧品・医薬品などは、150ドル以下でも目録通関にできないことがある。同日・同じ店の注文は合算される
- 為替と制度変更に備えて、基準に近い価格には余裕を持たせる
韓国向けの価格設計や、関税・通関を含めた出荷の組み立てを相談したい方は、海外EC運用代行のご相談からどうぞ。
参考にした資料
- ジェトロ「小口貨物の通関・関税制度(韓国)」(2025年12月)
- ジェトロ「小口貨物の通関制度:韓国」
- アジア経済「Ministry of Economy and Finance Faces Dilemma Over Duty-Free Reform Amid Direct Purchase Crisis」(2024年6月)


